Q:なぜこの映画を撮ろうと思ったんですか?

地球温暖化や気候変動のことを知って、なんとかしないと、と思った。最初は気候変動に関するドキュメンタリー映画を作ろうと、4、5人の仲間達と動いていた。だけど、どこから手をつけて良いかわからず、なかなかプロジェクトが進まなかった。そんな中、2008年カール(エディブルシティのプロデューサー)に再会したんだ。その時カールはパーマカルチャーを学び、食べられる庭を作ったりしてた。僕ももともと食や農に関心があったし、カールから話を聞いているうちに食に関するムーブメントが起こっているような気がした。そこで気候変動の映画もなかなか進まないし、当面の間、カールと一緒に食について起こっている事例を取材していこうっていう話になったんだ。そして、2008年にサンフランシスコでスローフードネイション(*1)という会議が行われることになり、その会議に参加した。それは自分にとって、とても重要な意味を持った。なぜなら、映画の前半のシーンにあるように、マイケル ポラン氏などこの分野の専門家たちの話を聞いたりしているうちに、この食というテーマは都市農業だけでなくシステムに関する世界規模の課題で、しかも個人としてできることもたくさんあると気がついた。 気候変動というとても恐ろしいけど、個人として何をしたらいいかわからないというテーマと違い、食は自分たちにもできるという感覚をあたえてくれるテーマだと感じた。誰でも土に触れることはできるし、植物を育てることで直接的な結果が体験できるしね。

そして、食に関する活動をしている人の話を聞いていくうちに、もしかしたら、食が多くの問題の解決の入り口になるんじゃないかと思った。

 

何より印象的だったのは、彼らが皆とても楽しそうに活動していることだった。自分がもともと気候変動をなんとかしたいと思ったのは、恐れが動機になっていたんだけど、食に関する活動をしている人たちは皆、とてもポジティブだった。土に触ることは楽しいし、一緒に美味しい食べ物を食べると、 コミュニティができる。食は人を一つにする力がある。コミュニティができるとそこからたくさんのことが生まれてくると思うんだ。 食のシステムはとても複雑だけど、 菜園に関わると、どれだけの時間や労力がかかるかがわかるし、食のシステムを作っている要素が具体的な体験として理解するきっかけになると思うんだ。

 

ポイジティブなビジョンを持って、自分ができることをやっている人に出会うちに、これらの魅力的な人たちの活動をただ伝えたいと思うようになった。出会った人たちの活動に触れ、ただ彼らみたいな人たちがいるということをより多くの人に知ってもらえたらという思いから、この映画にフォーカスすることに決めたんだ。もともと気候変動に関するドキュメンタリーを作ろうといって集まっていた仲間たちの興味関心とは少しずれてしまったから、最終的には僕とカールの二人での製作になってしまったけどね。

 

でもこの映画を通じて、人間的にとても魅力的な人たちにたくさん出会うことが出来た。自分がこの映画をやりとげようと思ったのは、出会った人たちにすごくインスパイアされたからだと思う。 ジョイやアントニオに出会って、彼らの話を聞くうちに、彼らのことを多くの人に知って欲しいと思った。そしてジョイやアントニオが映画を見た時に、自分たちがやっていることに自信と誇りを感じてもらえたらと思った。彼らのメッセージの一番心が動かされる部分を伝えられたらと思った。彼らのストーリーを広げていくことが、僕が彼らに対して貢献できることだと思ったからね。

 

Q: どんな風にキャストを選んだんですか?

誰にインタビューするか、最初から決まっていたわけじゃなくて、すべて人のご縁でつながっていった。すべてが有機的にすすんでいったよ。最初にでてくるシーンが僕らが一番最初に撮影したシーンだったんだ。コンクリートを潰している場所はカールの家の目の前だったんだよ。2回目の撮影はslow food nation でだった。

 

そこでまずフードファーストという団体の代表をしているエリック ヒメネス氏に出会ったんだ。彼はメキシコの農民たちの権利を守る活動をしていた。エリックが食のシステムを国際的、政治的な面から説明をしてくれたんだ。そして彼が何人か話したらいいと思う人を紹介してくれた。その内の人が ジムで、彼がウィロウを紹介してくれて、ウィロウがジョイを紹介してくれて、最終的にはすでにつながっている人に戻ってきたりして。そんな感じでつながっていったんだ。

 

Q: 映画の後、食に関しての気づきは上がってきていると思う?

どうかな?それはわからない。

でも、最近ではどの都市に行っても 有機やちゃんとした出処の材料を使っているレストランがたくさんあるのは、この国で意識の変化が生まれてきていることじゃないかな。この映画が直接貢献できたこととしては、ベイエリア内で新しいコネクションを作ることができたことかな。映画に出た人たちがお互いのストーリーを知り、例えばジョイとアントニオが友達になったりとかね。すでに存在していた多くの活動をつなげることに貢献できたのは嬉しいことだった。

 

一つ映画に付け加えたいことがあるとしたら、どうやってこういうパッションから生まれた動きが持続可能になっていけるかという部分だと思う。

今、多くの団体が経済的にサステナブルなモデルにシフトしてくる

コミュニティベースの非営利の活動はパッションのある人が始め、その人が頑張ってひっぱることで続いているケースが多い。それはもちろん大切なことだけど、でもそのコアメンバーがいなくなると、多くの場合続かなくなくなってしまう。

 

興味深いのは社会的な活動をしつつも営利活動をするソーシャルビジネスなど新しいビジネスモデルが生まれてきていることだ。コミュニティにちゃんと貢献するけど、ビジネスとしてもサステナブル。Planting justice (*2) やPie Ranch(*3) などとても素晴らしいと思う。でもこれらの団体は自分が映画を撮り始めた時には存在していなかった。自分がパッションを持っていることを、この壊れたシステムの中で続けていく方法を見つけることが課題だと思う。今のシステムは正直いってめちゃくちゃだけど、でも今はこのシステムの中で活動しながら変化を生み出さないといけない。もちろん草の根は大事だけど、映画の一つの目的は草の根の人たちをワシントンでネクタイして働いてる人たちとつないでいくことだった。

 

ムーブメントを起こして、政治的力と意志を生み出していくのは新しいアイデアではないよ。自分はそういうことを学び始めたのが遅い方だと思う。スローフードネイションはすでにこういったムーブメントの一部だったからね。そもそもベイエリアは都市型農業の歴史のある場所だった。自分たちは3つ目の波なんじゃないかな?例えばスローフードネイションの会議でサンフランシスコ市庁舎の前にコミュニティファームを作った例だけど、この会議がサンフランシスコでホストされると知った瞬間、市の委員会でのミーティングで多くのとても影響力を持った都市農家が集まってきた。そして会議の際には都市農場を作るべきだと主張したんだ。もちろん委員会は懐疑的だった。でもそこで1945年の写真を持ち出し、1945年にできたことを今の自分たちにできないのは恥ずかしいことだと、過去のデータや事例などを含んだ素晴らしいプレゼンをして委員会を納得させてしまった。こんな風に知識と戦術を持った活動家はちゃんと準備ができていて、人々がNoと言えないほど説得力を持って事を起こすことを可能にするんだ。サンフランシスコは市民活動の歴史の中で、何度も同じような経験を積んできから、活動家の考え方や戦術がとても成熟しているんだと思う。

でも、直接的な経験がないとできないというわけじゃない。オキュパイファームは、20歳そこそこの若い学生たちが始めたムーブメントだ。彼らは知識はあったけど経験があったわけじゃない。でも違う未来もあるんだと知っている事と、自分たちが生み出そうとしているビジョンを最後までやり遂げる強い意志があれば、多くの事が起こり得るんだ。

 

Q:映画を見た人に何を期待していますか?

とにかく多くの人に見てほしいと思った。映画を見た人が映画に出てくる魅力的な人たちのストーリーに インスパイアされて行動を起こしてくれたら自分の目的は達成されたと思う。

 

2016/3/8 by Eri Suzuki